牧田傑の肋骨-6本-骨折日記
肋骨-6本-骨折日記
牧田 傑
事故当日(2007年9月1日(土)、大阪にて、大阪男組の試合)
事故の模様:
味方が蹴った右のコーナーキックが、ペナルティーエリアに入ってすぐのところにいた僕の方に向けて曲がって飛んできた。ややこしいボールで、守備陣も攻撃側もボールめがけて走ってくる。僕も右から来るボールを見ながらボール落下地点の左前方に走りこむ。と、そこで僕と反対にゴールの左方から斜め後ろに走り戻ってきた味方の選手と激突してしまった。僕は右を見ながら左前方に走り、その味方は右前を向きながら右後ろに走る、ということでお互いが良く見えていなかったのだろう。観戦していた仲間の奥さんによると「ドキッとするくらい」激しくぶつかったそうだ。
ぶつかっただけなら良かったのだが、倒れた僕の上にぶつかった味方がもろに倒れこんでしまった。左の胸に相手の全体重がかかり、肋骨の方から「メリメリ」という音がするのが聞こえた。しばらく息ができずうめくばかり。
事故直後:
事故の直後は肋骨が折れたのかヒビなのか、あるいはひょっとして何ともないのか、判断がつかない。とりあえずシャワーを浴び、服を着替えてから病院に送ってもらった。何やらすごく痛いのだが、どこが、というよりジワーッとした痛みで額から冷や汗がたらたら出る。病院で最初の診察を受け、レントゲンを撮った後、二度目の診察を受けたあたりで冷や汗が消え、痛みが鋭いものに変わった。
医者はレントゲンを見ながら「肋骨が5本折れています」...「いや、6本だ」との診断。医者によると「この後、気胸が起こらなければそんなに心配することはない」とのこと。(気胸というのは肺に傷がついて穴が開き、しぼんで息ができなくなる症状を言う。)
治療としては胸の周りにバストバンドというコルセットのようなものを巻いて貰ったことと、痛み止めの薬を処方してもらったこと。腕なんかと違って肋骨にはギブスをはめる訳にも行かないのでこれしかないのだろう。
その後、車で伊丹空港に送ってもらい、伊丹→羽田→自宅と帰ってくる。伊丹でも羽田でも「車椅子サービス」をお願いし、JALのうら若き女性地上係員に車椅子を押してもらってそれはそれでよかったけれど、その夜はいきなり、そして休みなく攻撃してくる「痛み」との戦いが続いた。
事故二日目(9月2日(日))
この日記を書いているのでもお分かりのように、指を動かすのには問題なく、頭も昨日の混乱から落ち着いて普通に考えられるようになっている。じっとしているとあまり痛みを感じないので昨日よりましな気がするのだが、動くと、事あるごとに「キリッ」「キリキリ」と痛みが攻撃してきてたまらない。
骨折2日目の今日は「どうすると痛いのか」が分かってきた。左わき腹(折れた骨があるほう)の筋肉が動くと「痛い!」のだが、それは左側に力を入れたときと、そうではなく、とにかく急な動作をするときに起こる。後者は、例えば何かが落ちそうになって右手をパッと動かしたときなど。なぜかと考えると、急に体のどこかの部分を動かすと、全身のあちこちでそれに対してバランスを取る動きが起こり、そのひとつとして左わき腹の筋肉も動く、ということではないか、と思う。なかなか人間の体というのは複雑精巧にできているもんだ、と感心。このため、今は何をするにも超スローモーで動いている。まるで太極拳のようにソローリソローリと腕や足を動かしていると痛みが発生しないのだ。
しかし、最悪なのは横になろうとするときと、逆に起き上がろうとするときで、何をどうやっても上の「キリキリ」攻撃が一度に襲ってきて「イーっ」とか「うーっ」とかなる。ただ単に「寝る」ことがこれほど大変とは想像したことがなかった。昨日、うっかり食後に布団の上に寝転がった僕は、起き上がろうとして痛みの総攻撃に会い、まるで甲羅を下にひっくり返された亀のように手足をバタバタさせながらもがいていた。今日はもう恐ろしくて横になる気にならない。ベッドにクッションを並べ、壁にもたれて座ったまま寝ることにする。
明日はこれがもう少し収まっていますように。
事故3日目(9月3日(月))
今日、近所の佐藤整形外科に行ってきた。土曜日に診てもらった救急病院の医者は簡単に言うとやや安易なものの言い方だったのだが、今日の先生は違っていて、こちらの目を見ながらきちんと説明してくれたのが印象的。診断はというと肋骨が少なくとも6本折れており、それ以外に怪しい骨もあって、ひび割れくらいはしているかもしれない、というあたりは特に変わらない。今日のレントゲンには肺の下部に土曜日には見られなかった血胸という血の塊が黒く映っており、これがもっと大きくなってくるようだと呼吸困難になりかねないので要注意。折れた骨あるいは傷ついた肺からの出血があるらしい。
体を起こしたまま寝ているせいで睡眠不足なのか、骨が折れると疲れるのか分からないが、何となく「つらく」そして眠くて、昼間からちょっと居眠りしたりしている。でも、明日は大事なプレゼンテーションがあり、先生に「行っても大丈夫ですか」と聞いたら大丈夫との返事。仕事は明日からスタートできるようだ。
今、一番恐ろしいのはくしゃみと咳。一度、くしゃみをしたときに、できるだけ抑えたくしゃみだったのにメチャクチャ痛く、こりごりだったので、飲み物が気管の方に行って咳が出そうになった時には必死でコホコホと最小限の咳に収めた。夜、寝るときにもくしゃみが出そうになったのであわてて鼻炎の薬を飲んだ。佐藤先生は風邪を引いたりして咳が出るようだと治癒に時間がかかる、と言っている。
事故8日目(9月8日(土))
東京で二度目の通院。レントゲンを撮ると懸念事項だった血胸が消えて、肺の下の方がきれいに白く写っているのが見える。事故以来これまで1週間、自主的にアルコールなしですごしてきたのだが、これなら大丈夫かも、と思って聞いてみたら、先生から「飲んでいいです」とのご宣託あり。これからは通院も2週間に一度で良い。
今も痛みはあるのだが、最初のときのような鋭い痛みではなく、やや鈍い痛みなので顔をしかめることは少なくなっている。
気になるのはバストバンドをはずすと左わき腹が右に比べて大きく膨らんでいること。聞いてみたらやはり肋骨が折れたせいで、「さすがに6本も折れると押さえが利かなくなる」というのが原因らしい。僕の体は今、「タガが外れた状態」にある、という訳だ。
事故後2週間(9月15日(土))
今も鈍い痛みはあるが、このところ顔をしかめる痛みは発生していない。もう痛み止めの薬も飲んでいないが、胸のバストバンドをはずすと相変わらずタガがはずれた格好になるのでこれは寝るときもつけている。骨がつながり出すのは3週間目あたりからだそうなので、今はまだバラバラ状態のはずだ。ときどき胸の辺りから「キコキコ」という感触が伝わるのは、ひょっとしてバラけた骨がずれて出している音か?
週明けの月曜日から海外出張なのだが、ま、何とかなるだろう。くやしいのはまだまだサッカーをするわけに行かない、ということだ。あと4週間も。。。。
総括
2週間たった時点でこれまでを振り返ってみると、以下のような事項が教訓として思い浮かんでくる。皆様のご参考にしていただければ、と思う。
事故の後:
事故は起こるものだ。ただ、事故の後は、一見、大きな問題がないように見えても必ずすぐに病院へ行くべきだ、と思う。僕の場合も、シャワーを浴びて服を着替えて、と余裕があったように思えるのだが、実は本人には何が起こったのかすぐに判断できていない。最初は痛みの強さも箇所も自覚症状がはっきりしない。仮に本人が「大丈夫」と言っても周りの人間は鵜呑みにしてはいけない。
医者:
僕には最初に見てもらった救急病院の医者が楽観的に思えた。彼が「阪神の赤星選手なんか肋骨を骨折してもプレーしています」と言ったり、「気胸が起こると問題ですがめったにそれはないから」などと言ったりしたのでその時は自分でもやや安易に考えすぎてしまった面があるように思う。あとで思い当たったのだが、男組のA先輩は以前、肋骨骨折のあと気胸を発症して、夜中に急遽入院しておられる。決して気胸はめったにない、心配しなくて良い、とは言えない。
一方、東京でかかった佐藤先生は楽観的ではなく、かといって脅すわけでもなく、できる限り多くの、そして正確な情報を与えようとしてくださったように感じた。肋骨骨折のように治療として行えることがあまりない病気でも、医者から「正しく、客観的な情報を十分に」与えられると、患者としてはその後の対応と判断をより適切に行うことができる。その意味で、もし医者から十分な情報を与えられていない、と感じたら別の医者に行ってみることも必要だ、と思う。
事故を減らすには:
事故を完全に無くすことはできないが、減らすことはできるだろう。僕の場合、肋骨骨折なので4日目に職場復帰できたが、あの状況だと首の骨や背骨、あるいは顔面だった可能性も十分ある、と思うとぞっとする。
ひとつの反省は、ちょっと「勇気」を出しすぎたかもしれない、と思う点だ。実はその日、コンタクトレンズを片方にしか付けられなかったせいで視覚に問題があったのか、何度か相手に競り負けてボールを取られた場面があり(いや、いや「コンタクトレンズのせいにするな」という声がどこかから聞こえてきそうだ!)、味方から叱咤されていた。コーナーキックのときはややこしいボールだったのだが、僕はそれまでの失策を取り戻そうと「思い切って」飛び込もうとし、結果として味方に激突してしまった。
真剣に試合をする、というのと、無謀なまでの勇気を出す、のとは違う。プレー中、常に冷静にこれを判別し、真剣であるが無謀ではないプレーができるよう、これからも精進に励みたい。
肋骨骨折:
最後に肋骨骨折について。上にも書いたが、肋骨骨折で問題が起こるのは「気胸」と「血胸」で、気胸は肺に穴が開いてペシャンコになり息ができなくなるもの、血胸は血液が肺の下部、肋膜の上に溜まって肺を圧迫し、やはり最悪は呼吸困難になるものである。
これ以外には緊急事態が起こることはないようだ。救急病院の先生が言うように肋骨が折れてもそのままでスポーツする人たちもいるようだが、やはり僕のように6本折れるとそうは行かないだろう。胸のタガの外れ具合を見ているとこれで胸トラップはできない、と思ってしまう。
普通、3週間くらいたつと折れた部位の周りが新しい骨成分で包まれ、レントゲンで見るとやや白くなり、6週間くらいでほぼ完全につながる。ただし、風邪などをひいて咳が続くようだと回復にもっと時間がかかる。
先生に、
「折れた後は骨が強くなるのですかそれとも弱くなるのですか」
と聞いたら、答えは、
「つながったときは周りより太くなるが、その後、周りと同じ太さに戻ってゆく」
ということだった。だから正解は「最終的にはもとと同じ」という事のようだ。
(以上)
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コメント
牧田さん,肋骨の骨折とのことお大事にしてください.私はこれまで2回ひびを入れたことがありますが,真面目に医者に行かなかったせいもあり半年近く痛かったです.最初の2週間くらいは体を横たえるのも辛かったです.咳き込んだり笑ったりするのも辛いですよね.
怪我をした理由は,やはり人とぶつかったり,人に足をすくわれて転倒したりと接触プレーが原因でした.ご指摘の通り,無謀なプレーと勇気のあるプレーは違いますよね.怪我の少ない安心安全なサッカーを心がけたいものです.
一日も早く復帰されることをお祈りしております. 榊原
投稿: 榊原 | 2007年9月19日 (水) 13時33分